障害者に関する総合計画提言(概要)
1998(平成10)年8月31日作成
はじめに
日本障害者協議会代表 調 一興
1993(平成5)年の障害者基本法の制定とそれに引き続く障害者プランの策定以降、わが国の障害者施策をめぐる展開は非常に急速なものとなってきた。手帳制度を含む精神障害者施策が動き出し、市町村障害者計画が次第に策定され、また地域生活支援事業が広がりつつある。1999(平成11)年には、民法改正による新たな成年後見制度の発足、障害を理由とする欠格条項の全面的な見直し、3種の障害者福祉法の改正などが予定されている。
他方では障害者施策をとりまく環境や基盤が大きく変動しつつある。1999(平成11)年には社会福祉事業法の改正が予定され、介護保険制度の発足は2000(平成12)年からと目前に迫っている。そうした中で、不十分と批判されている障害者プランの目標値すらも「財政構造改革」によってその実現が危ぶまれている。
こうしたかつてない規模の制度変革の動きは、戦後の障害者施策と関連制度とがもはやこのままでは世紀の峠を越せないような大きな矛盾に直面しつつあることの反映である。たとえば、現在の施策の継続では精神病院への「社会的」入院患者の減少はほとんど望めないことが明らかとなってきた。欠格条項や禁治産制度などは、障害者基本法の目的とする「自立と社会参加」を妨げるものであることが明白となってきた。最低生活費にはるかに及ばない障害基礎年金、ノーマライゼーションが叫ばれながらほとんど進展を見せない障害児の統合教育。さらに、先進国はもちろん発展途上国でもほとんど例を見ない障害種別の縦割りの福祉法も、本格的な地域生活支援の時代への移行を妨げている。21世紀は、障害の種類も年齢も関係なくサポートニーズに応じて身近な地域でサービスを利用し、すべての人が地域社会に不可欠な構成員として参加・貢献し、胸を張って生きていけるような世紀でなければならない。
本協議会は、「完全参加と平等」をテーマとした1981(昭和56)年の国際障害者年の前年に結成された「国際障害者年日本推進協議会」の時代からの20年近い取り組みを通じて、そのような21世紀を実現することが可能であるということ、つまりそのための方法があるということを確信してきた。本提言はそのための有効な方策として提案するものである。政府、国会、経済界、マスコミ、学界、そして障害者団体や関係者の間で検討され、よりよい法制度へのたたき台として、また障害者プラン見直しの指針としてこの提言が活用されれば幸いである。
なお、障害者施策の分野はこれら6領域にとどまらない。教育、医療・保健についてはプロジェクトを立ちあげることを検討している。現在、本協議会の常設委員会のひとつである政策委員会を中心にして、成年後見・権利擁護、欠格条項、介護保険と障害者の介護、障害の定義と認定、障害者差別禁止法(条項)などを取りあげている。また、6領域のプロジェクトに先行した障害者福祉法制定特別委員会による「障害者福祉法への試案」を関連提言として巻末に掲載したので参考にしていただきたい。
本提言の作成は、財団法人安田火災記念財団からの助成がなければ実現できなかったものである。心から感謝の意を表したい。また6つのプロジェクトは、2年間にわたる熱心な調査や討議を行い、障害のある人々の意向をふまえつつ政策科学的な分析を経て、日本における初めての総合的な障害者施策の提言を作成してくださった。委員の皆さま、そして特にまとめ役と執筆にあたられた委員長の皆さまに深く感謝する。なお、これらの提言は各プロジェクトによるものであるが、協議員総会や理事会での議論を経て、全体の調整や一部加筆などの修正もなされた。したがって文責は日本障害者協議会理事会である。
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所得保障に関する提言(概要)
重度障害者にとって、障害者プランがめざす地域での自立は、生活できる所得の保障を欠いては不可能である。また、働いて所得を得てはいても障害を理由に低い賃金にとどまっている人々も多く、一定の経済保障が求められる。
あらためて国民「皆年金」の理念や基礎年金制度創設時の理念に立ち戻り、年金を基本にした所得保障制度の確立を図るべきである。
-
障害年金について
- (1) 障害基礎年金の年金額を引き上げなど。
-
- 1)
- 1級の障害基礎年金の額を生活扶助基本生計費(1類プラス2類)に障害者加算を増額して加えた額に引き上げること。
- 2)
- 20歳前初診の障害者などに対する所得制限を廃止し、すべての年金は、総合的な累進課税を適用して社会的な公平をはかること。
- 3)
- 年金受給権発生後も子の加算をつけること。
- 4)
- 軽度の障害者で就労に安定して対応できない(したがって低所得の)人々のために3級の障害基礎年金を新設すること。
- 5)
- 基礎年金受給者に対しても所得比例の2階部分の年金の保障を検討すること。
- (2) 若齢老齢年金の完全復活
- 厚生年金などに加入した障害者が肉体的な加齢が早いために、早期退職となり、年金を受けられないケースが多くある。障害者の早期退職についても年金が支給されるよう検討すること。
- (3) 障害認定基準を改善すること。
- 総合的な社会生活上の能力評価を行うようあらためること(現行は日常生活の不便度が基準となっている)。−提言には6項目の具体的な改善策があげられている。
- (4) 無年金障害者を早期に救済すること。
- (5) 社会保険審査会・審査官制度の改善
- (6) 制度運用にともなう問題の改善−4項目の提言があげられている。
- 自立の捉え方を広く社会的自立とし、また家族からの独立を容認すること。
障害者とその家族の権利を理解し、その実状を配慮した相談援助ができる専門職員を配置し、安心して相談できる体制を確立する。
- (2) 具体的改善要望
-
- 1)
- 障害者が生活していく上で必要な経済的基盤の確保−障害者加算、介護加算の増額、障害者加算、介護加算適用範囲の拡大、「移動加算」の創設
- 2)
- 在宅生活に必要な生活用品−家具什器費の増額
- 3)
- 住宅扶助額(転居費用、家賃)の増額
- 4)
- 教育支援、就労支援(生業扶助)、勤労控除の改善充実
- 5)
- 自動車、冷暖房、電話、ファックスなどの購入を認めること。
- 6)
- 成人に達して別世帯、世帯分離する場合に親兄弟の扶養義務を課さないこと。
- 7)
- 安心して相談できる、専門性のある職員の配置
多種多様な諸制度を整理して、奨学金が受けられるよう個別の事情にそって相談に応じ、積極的に利用できる体制を整備すること、特に社会福祉協議会にその役割を求めたい。目次に戻る
施設制度・施設体系に関する提言(概要)
わが国の障害者施設は多様な法体系によって構成され、その進展によって果たしてきた功績は少なくない。しかしながら、複雑多岐にわたる障害者施策の現状が整合性や一貫性を欠き、障害者の地域生活のニーズに対応しきれない状況にあり、制度・体系の見直しの必要性があることは、障害者プラン自らが認めていることである。
この提言は、施設制度および体系の見直しの基礎を「障害者総合福祉法」の導入に置き、最近の緊急課題とされている行政改革や社会保障構造改革、社会福祉の基礎構造改革、さらには「今後の障害者保健福祉施策の在り方」最終報告などとも一連のものとして取り組むことを求めるものである。
- (1)
- 福祉圏域における施設の偏在と絶対量が不足しており、設備運営基準と施設運営の実態に乖離がある。
- (2)
- 現行の措置方式の問題として、サービス選択の制限や法・制度としてのあいまいさ、運営費の改善に関わる措置方式の功罪、公費助成制度の改変の可能性が検討されている。
- (3)
- 重度・重複障害者の援護や増大を続ける小規模作業所への対応など、多様化するニーズに対する施策の不備の顕在化している現状に、制度体系再構築の実を及ぼすこと。
- (4)
- 複雑多様化した施設体系における施設機能の硬直化や混乱の状態に加え、地域生活支援の新規事業が既存事業との機能分担や福祉圏域などに不明確な状況のあること。
- (5)
- 続出する前近代的な施設運営に関した不祥事などの問題があり、利用者の権利擁護システム確立と、施設運営に携わる専門職のあり方にも関わる問題が内在している。
- (1)地域生活支援の場とするために
- 施設の目的は、障害者の地域生活を支援する社会資源の一つとして機能すべきものとの認識に基づき新たなシステムを構築すること。
施設の性格は、閉鎖性を脱却し地域ぐるみで支えあうものとして、住民参加のもとに運営されるものとすること。
施設の機能は、障害者の地域生活における多様なニーズに応えるため、通所利用への配慮にあわせ、派遣サービス体制の必要なこと。
施設の形態は、可能なかぎり小規模で運営できるようにし、そのために必要な設備・運営の基準を設定すること。
地域生活の総合的支援システムの一環として機能するために、他の施設・機関とのサービスネットワークの形成が必要であること。
- (2)施設体系について
- 障害者施設を、地域生活支援のために不可欠な建物その他の設備を整え、必要に応じた運営・管理がなされる態勢を備えた状態にある場所、と措定したうえで、その基本形態を次の5類型とし、統合的に再編成すること。
- 1)
- 自立訓練の場
- 2)
- 社会就労の場
- 3)
- 生活援助の場
- 4)
- 地域利用(社会参加・情報・文化・生涯学習)の場
- 5)
- 総合相談支援の場
4)の類型の中に、重度障害者のための活動の場を設ける方法を講ずる。施設体系は簡素化するものの、地域における中核的施設については、必要に応じ複合的支援体制を備えるものとすること。障害児施設は児童福祉法に基づく「療育の場」として、救護施設は生活保護法に基づく「生活施設」として改善整備すること。
- (3)施設制度について
- その1は利用決定システムと財政責任について、1)措置制度の再検討による障害者の選択利用を保障するシステムの構築、ならびに通所利用および地域支援に要する事業費に対する公的責任の明確化、2)費用徴収制度における自立訓練の場や就労の場についての合理化。
その2は設備・運営基準について、1)新たな施設体系に対応する基準の再構築にあたり、諸施設の目的・機能に即した専門性を確保できる構造設備と職員配置、ならびに施設種別間の格差是正、2)他種施設との合築や民間施設の利用を可能とする施設設置方法への改善。
その3は施設運営における量の確保と質の向上について、1)福祉圏における目的・機能別の施設の適正配置、2)利用者のニーズに対応できる専門性の向上とサービスプログラムの開発、3)利用者の自立性と権利擁護を図るための参加と公開を保障するシステムの構築、4)施設運営における当事者団体の役割と責任を重視した支援。
- (1)全般的事項
- 第1は「障害者総合福祉法」の制定である。制度間の格差、重複、空白のある現状を改善するための総合化した法体系が必要である。
第2は障害認定制度の合理化である。重度・重複障害に不合理な現行制度は早急な是正措置が必要である。
第3は設備運営基準の改革である。施設におけるサービスの質的向上を図るために、施設種別の具体的な見直しが必要である。
第4は措置制度の合理化である。運営費助成に対する公的責任を担保しつつ利用者の選択の意志を尊重する制度に合理化していく。
第5は総合相談機能の整備である。福祉圏域を住民生活に密着したものとし、市町村などの関係機関と各種の施設・事業との役割分担の明確化による機能の調整が必要である。
第6は地方公共団体におけるサービス格差の是正である。地方分権の進行とともに、施設制度の運用にも格差是正の配慮が望まれる。
第7は地方公共団体における障害者計画策定責任の明確化である。とりわけ市町村の自主的、継続的責任を義務規定とする。
第8は福祉用具普及支援体制の確立である。専門性の高い福祉用具の供給体制(例えば補装具センター)を確立し、障害者支援のための施設体系に位置づける。
第9は他分野・制度との関連の調整である。保険医療、教育育成、雇用就業、住宅供給、介護システム、情報提供、老人保健福祉、児童福祉、公的扶助など他分野との連携が肝要であり、そのための制度間調整は避けられない。
第10は用語の問題である。「措置」、「更生」、「授産」、「処遇」、「寮母」、「精神薄弱」のように、好ましくないとされ、実態の変化している用語をあらためる。
- (2)入院中心の精神医療の改革
- 精神病院経営への配慮と長期入院者(とくに高齢者)の退院が現実には困難であることを理由に、生活環境を配慮した長期収容型施設(「心のケアホーム」)を精神病院内に設置しようとする動きがある。多くの入院者の希望に反し、ノーマライゼーションや障害者プランの精神にも反し、国際的にも恥ずかしいこうした「第2病院化」への動きをやめ、地域で共に生きるという方向を本格的に進めるべきである。
- (3)施設運営に関する総括的事項
- 今後の施設運営を効果的に行うために、具体的方法として2つを提案する。
その1は施設の小規模複合化についてである。ひとつの機能の最低利用者数を5名程度とし、各機能が結合して20名規模の利用者数をもつ事業体として運営できるようにする。そのためには各種の規制緩和が必要であるが、これによって法外小規模作業所問題にも道が開けよう。
その2は施設の弾力的運用である。これは援助を行う場と人的援助を一体的に提供する従来型の施設に対して、場と人とを別々に提供するシステムの提案を柱としているが、併せてグループホームの推進、職・住分離の原則、昼間・夜間の二重利用についても提起している。
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職業リハビリテーション・雇用制度に関する提言(概要)
- 第1 基本的な考え方
-
- (1)
- 職業を通じての社会参加は、憲法第27条に保障されている<勤労の権利義務>を尊重し、これを守ることを基本として、すべての当事者に開かれている。したがって、一般雇用を基本としながらも、従来の労働施策の不十分さを補ってきている「福祉的就労」などを含む多様な選択肢が用意されるよう検討する必要がある。
- (2)
- 一般雇用に関しては差別の発生を防ぐとともに労働生活の質の向上のための様々な条件整備が望まれる。そのための一方策として、日本の実状に即した障害者差別禁止法、特に雇用差別禁止法制の導入(雇用率制度との統合)を検討すべきである。また、福祉的就労に関しては、働き方の一つの選択肢として、機能分化を図りつつ、可能なかぎり労働法規の適用する方向での対処が望まれる。
このためには、<勤労の権利義務>とは、一般雇用という狭義の就労にかぎらず、多様な就労形態によって働く権利であり義務であることを理解する必要がある。
- (3)
- 職業的自立支援に際しては、主として「参加/参加制限」の視点から、環境整備に重点を置き、職業への移行支援、職業生活の継続・向上の過程においても必要に応じて継続的な支援策を講ずることが重要となる。
- 第2 今後の施策の方向
-
- (1)
- 現行の手帳制度は「機能/構造障害」的観点から範囲・程度が判断されているため、サービスの対象から外れたり、適切な措置の対象にならないなどの問題がある。
- (2)
- このため主として「参加/参加障害」の視点から、新たな「認定システム」を導入し、職業上の支援を必要とするすべての人々を、職リハ・雇用率制度などの対象とし、支援の必要度の高い人には、手厚い措置を適用できるようにすることが求められる。
- (1)
- 企業および公的セクターの障害者雇用を促進するため、(1)授産施設などへの仕事を発注または当事者団体に業務委託する場合、(2)企業内でのキャリア・アップまたはグループ就労の機会を提供する場合には、その程度を勘案して納付金の減額・免除、助成措置、実雇用率への算入などの特例措置の導入が望まれる。
- (2)
- 雇用率制度に加えて、差別禁止法などの経験に学びながら雇用率制度を補完・代替する措置の導入が望まれる。あわせて、職場内での差別を防止するための企業内外のシステムのあり方の検討も望まれる。
- (3)
- 納付金及び調整金の対象事業主を漸次300人未満規模へと拡大し、これにともない報奨金の段階的減額・縮小をするとともに、助成措置については必要度の高いものに限定することを基本として、多様な雇用形態に対応し、かつ、人的支援を主体としたものへと転換するものとする。
- (1)
- 地域生活の可能性の支援を基本とし、高度情報通信技術の発展などにともなう多様な雇用の場の創出と起業支援策なども重要である。さらに、福祉工場・授産施設についての新たな視点からの見直しも必要とされる。
- (2)
- 福祉工場・授産施設は、1)全面的に労働法規を適用すべき施設として、企業的経営手法を導入し「重度障害者多数雇用事業所」または「特例子会社」などとして位置づけるもの、2)訓練機能と就労機能をもつ施設として地域の職リハの一翼を担う後述の「障害者雇用・就労支援センター」(支援センター)として指定するもの、3)デイサービス施設、4)これらの複数の機能を同一施設内にあわせもつ施設に整理することが望ましい。
- (3)
- 以上の整備にともなって、措置制度については、給付水準の低下を招来することのないよう補助金制度として整理し、支援センターとして指定された施設にあっては、一般雇用への移行率の高い場合は、補助額を高くするなどの仕組みの導入も必要となろう。
- (4)
- 一方、ヨーロッパ諸国で大きな成果を上げている賃金補助付雇用などの制度についても、年金制度との関連を含め日本への導入について検討すべきである。
-
新たな視点に立った職リハサービスの推進体制の見直し
- (1)
- 従来型の就職レディネス確立サービス中心から、地域社会資源(事業所や就労施設)を最大限に活用した「雇用・就労移行システム」の構築が求められる。
この場合、職場適応訓練や賃金補助などの諸制度の整理統合も望まれる。移行支援システムは、雇用・就労への移行の支援とともに、移行後の継続的支援が必要とされる人々にも対応できるべきものであり、この視点から、助成制度に加え必要な財源の確保が望まれる。
- (2)
- 雇用から福祉的就労までを目標とする職リハサービスは、地域との密着したものとなることが求められる。この視点から、「障害者雇用支援センター」は、生活圏域に重点を置いた「障害者雇用・就労支援センター」として整理されることが望まれる。
地域障害者職業センターについては、新たな認定システムの運用などの他、「障害者雇用・就労支援センター」をはじめ地域の関係専門職などに対して技術的な支援を行う施設として位置づけるものとする。
- (3)
- 上記のようなすべての職リハ業務の推進にあたり、職リハ業務の一元的遂行のための基盤となる「職業リハビリテーション法」(仮称)の制定の検討が望まれる。
- (1)
- 知的障害者については、雇用率制度が適用されたことに対応し、公的セクターにあっては、任用・人事管理システムの見直し、民間セクターにあっては、人権擁護の視点に立って企業内外の支援システムの整備が必要とされる。
- (2)
- 精神障害者については、障害者プランにおいて、2002(平成14)年度までに、医療・福祉などと連携した支援体制の整備を図るとともに、精神障害者の特性に配慮した柔軟な職リハの実施および雇用管理に関する支援など施策の充実を図ることが明示された。また、精神障害者の雇用実態などを踏まえ、雇用率制度の適用のあり方を検討することも明示された。精神障害の特性について理解を深めるとともに、望ましい雇用率制度の各種の条件整備施策が重要となる。
その他の障害にあっても、当事者の意向を最大限に尊重しつつ特性に応じた特別施策を展開し、障害種別の雇用格差を生じないように努めることが重要である。
当事者およびその団体は、政策決定過程への参画とともに、今後は、障害者雇用・支援センター業務など、職リハサービス実施過程においても大きな役割を担うことが重要となる。
- (1)
- 職リハ・雇用サービスに対する社会的な要請は高まっており、専門職の職務内容、資格要件、養成・研修システムなどの整理・充実が重要となる。このため、法定の国家資格として「職業生活支援士」(仮称)の制度の創設などが望まれる。
- (2)
- また、職業生活全般にわたり直接的な支援を行う専門職として、「ジョブ・コーチ」制度の創設や、ピアカウンセラーの登用なども職リハ・障害者雇用サービスの向上には極めて重要である。
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地域生活と介護制度のあり方に関する提言(概要)
《新たな時代の障害者の地域生活のあり方について(6つの理念)》
- (1)
- どのような障害があろうと、社会的サービスの保障のもとに、ライフステージの各段階において、地域における自立生活の保障、自己実現の確立をめざさなければならない。
- (2)
- 障害者(特に成人した障害者)は、親・家族とは独立した存在である。このことから、社会的自立生活の確立に向けた支援によって、障害者の地域生活の実現を図ることが重要である。
- (3)
- ハード・ソフト両面の条件整備を推進し、障害者のさまざまな社会的・文化的・趣味的な諸活動を通じた生活の質・人生の質の向上を図らなければならない。
- (4)
- 所得・労働・教育の保障をはじめ、情報提供や交通機関などにおける物理的障壁が原因で、自由な社会参加が十分に保障されていないので、それらの現状を克服し、安心して地域で暮らせる生活を保障しなければならない。
- (5)
- 今後の障害者の地域生活の実現においては、介護を受ける側の主体性のもとに、豊富かつ質の高い多様なサービスが提供され、また、サービスの選択権が障害者自身に保障されなければならない。
- (6)
- 自らの判断力が喪失していたり、乏しい障害者においては権利行使が脅かされる恐れがあり、権利擁護制度の確立、当面は成年後見制度の制度化によって、地域生活の保障がなされる必要がある。
《介護を含めた支援(自立支援)のあり方について(5つの原則)》
- (1)
- 障害者が主体的に選択できるよう、サービスを整備すること。
- (2)
- サービスの選択にあたっては、障害者自身の自己決定を原則とすること。
- (3)
- 障害者の居住の場は、でき得る限り地域社会において確保すること。
- (4)
- 自由な移動とコミュニケーションの手段を保障し、障害者があらゆる活動に参加できる条件を整備すること。
- (5)
- 障害者が広く政策形成過程に参加できるよう保障すること。
生活支援としての「介護」に対して、より具体的な実践的方法や援助行為としての用語として「介助」が用いられていると考える。本提言では、「介護」を、「介助」を含む広い意味で使用している。各分野・領域でも微妙な違いがあるので、今後さらに検討して、用語の統一化を図るべきである。
介護を中心とした障害者の地域在宅生活を支えるためには、各種サービス((1)情報提供・広報活動・相談活動、(2)保健・医療、(3)機能訓練、(4)介護・家事援助、(5)社会参加支援、(6)教育、(7)雇用・就労、(8)移動・交通、(9)コミュニケーション手段の確保、(10)住宅改造、(11)福祉機器の普及・提供・使用訓練、(12)安全確保、(13)権利擁護・財産管理)、
環境整備((1)居住の場、(2)働く場・活動の場、(3)カウンセリング・ソーシャルワーク、(4)見守り・励ましの支援システム、(5)福祉のまちづくり)など、さまざまなサービス資源が必要である。各区市町村の「市町村障害者計画」の中で、これらのサービス導入を、今後ぜひ期待したいところである。
障害者の地域生活を支える「拠点」に求められる機能は、「そこに行けば、まずは相談に応じてくれる窓口」としての総合相談機能と、「ケアマネージメント」の機能である。
また、拠点の配置目標は、各区市町村に1ヵ所以上とすべきである。ただし、地域によっては、高齢者・障害児・精神障害者が一体となった「拠点」であってもよいし、小さい市町村の場合は、複数の市町村が連携して取り組むのもよいと考える。
今後は、「地域の拠点」にかかわる具体的な事項に関し、数値目標も含めて、「市町村障害者計画」をできるだけ早く掲げ、その早期実現への努力をすべきである。
介護の質を高めるためには、各専門職の人材の確保と、資質・能力の向上が必要である。また、地域の特性や障害の個別化を理解したアセスメント能力とケアプラン作成が期待されており、特にケアマネージャーの養成が急務の課題である。
障害者プランの人材養成の数値目標の実現はもとより、当事者の経験や意見を生活支援サービスに生かすものとして、ピアカウンセラーやケアサービスの提供者の教育・育成体制についても整備し、より有効な人材確保を図る必要がある。
また、既存の専門職に対しても、研修制度の保障などにより、時代の要請に応えうる人材教育が必要である。
- (1)
- 全地域における「市町村障害者計画」策定の早期実現に努力すべきである。特に介護問題に関しては、障害者の地域生活を支える鍵となるので、具体的なサービスの配置目標・内容、マンパワーなどを含んだ実際的な計画にしながら、実施にあたっては、地域間格差が生じないようにすべきである。
- (2)
- 障害者の地域生活を支える「拠点」づくりと、各地域での早期の業務の開始をすべきである。
- (3)
- ケアマネージメントの考え方と技法を、障害者の地域生活のためのケアプランの策定と実施のためにも探究すべきである。
- (4)
- 障害者の地域生活を支援するために、(1)重度の心身障害者のための24時間巡回介護サービス、(2)精神障害者・知的障害者・高次脳機能障害者など障害特性に応じた介護技術の開発と提供、(3)難病者のための医学的ケアを含んだ介護サービス、(4)在宅生活に役立つ福祉機器の開発と提供、(5)レスパイトケアなど、介護サービス資源の拡充をすべきである。
- (5)
- ホームヘルパー、ケアマネージャー、ピアカウンセラー、ボランティアなどの育成・教育、既存の保健医療福祉職の再教育を充実すべきである。
- (6)
- 「介護」という用語の概念・定義などに関する共通理解のための研究・討議が望まれる。
- (7)
- 2000(平成12)年から介護保険がスタートする。当面加齢にともなわない疾病や怪我を原因とする障害者は、本協議会などの要望もあり、従来どおり、公費による介護サービスが提供される。介護保険は、24時間介護サービスと言いつつ、最重度と認定されても月額30万円程度の保障しかなく、重度障害者の社会的自立を支えるだけの水準ではない。障害者が65歳を超えると介護保険の対象になりサービスのレベルダウンが懸念される。参議院の厚生委員会での附帯決議にもあるとおり、65歳を過ぎ、介護保険の対象になってもサービスの水準が維持されるよう、必要な部分は従来どおり公費を投入、介護保険と組み合わせ、サービスが提供されるべきだと考える。
障害者の社会的自立や社会参加を支えていく介護制度の構築を追求し、公費による介護サービスという原則を堅持しつつ、介護保険への制度統合を含めて、制度のあり方を総合的に再検討すべきである。
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交通アクセス・まちづくり・住居等に関する提言(概要)
- (1)障害当事者の参加
- 障害者プラン、市町村障害者計画などで障害当事者のニーズをさらに強く打ち出す。
- (2)障害者プランの数値目標
- 数値目標の設定のため、根拠となるしっかりした基礎調査を実施し、住宅需要・供給量の把握、地域によって異なるアクセス手法、整備手法を決定し、市町村障害者計画や住宅マスタープランなどに反映させる。
- (3)環境整備の考え方
- ハードを基本とした環境整備をまず原則としたい。その環境整備の基本は、「障害のある者のため」の特別な施策ではなく、子どもから高齢者まで誰もが参加し、利用することのできるユニバーサルな環境づくりを今後めざす。
- (4)政策課題の連携
- 縦割りシステムの弊害を抜本的に改善する。
- (5)プランの実施スケジュール
- 障害者プランは2002(平成14)年までであるが、その到達までの執行プログラムが十分見えない。プランの見直し後、目標到達までのスケジュール、評価・点検時期を明らかにする。
- (6)情報保障とサイン計画
- 各種サインは、知的障害者、視覚障害者、聴覚障害者などできる限り多くの人が理解し、利用できる共用のサインとする。施設や設備、使用方法による統一デザイン、形状などの研究開発を促進し、早急に結論を出す。環境改善後の整備情報を周知させるシステムを構築する。
- (7)プランのチェック機構
- 障害者プランおよび市町村障害者計画の進捗状況を当事者が参加し、チェックする第三者的評価委員会を設けて定期的に評価・公表するよう義務づけることを求める。
- (8)事業者・施設管理者の教育
- ハード面の環境整備と不可分な心のバリアを除去する方策を生活環境政策と一体的に進めるために児童、事業者、専門家、行政などのあらゆる機関で障害者の生活環境問題を理解する各種教育を活発化させる。
- (9)災害対策
- 今回の見直しでも十分な検討を経ていないが依然として障害者などの災害対策が進展していない。障害者プランの中で明確に災害対策を位置づけることが必要である。
- (1)聴覚障害
-
- 従来からの筆記(ノートテイク)、手話通訳制度に加えて、文字情報や補助補聴器具、その他デジタル通信機器など各生活場面における必要な情報伝達端末を総合的に活用したシステムの構築をめざす。
- 聴覚障害者のバリア調査が必要である。特に、外面からは生活上の困難が理解されにくいという問題がある。
- 聴覚障害者の社会参加が不十分である。これは、正しい情報提供が保障される社会環境、職場環境になっていないからである。
- (2)視覚障害
-
- 先端の機器開発、利用を公的施設に保障する必要がある。誘導用ブロックの評価を含め、音声、ピクトグラムなどを活用した抜本的な視覚障害者の誘導システムを確立する。
- (3)難病
-
- 筋ジスなど進行性障害、難病者は外部から判断されにくい側面をもっている。車いすを利用している場合は車いす使用者と同じ対応でよいと考えられやすいが、実際には、緩やかなスロープでもほとんど1人では登ることができない。主要移動経路上の垂直移動施設は、エレベーター整備などを原則とすべきである。
- オストメイト(人工肛門保有者)のためには安心して洗浄できる便房施設が求められる。
- (4)精神障害
-
- 精神障害者は、民間住宅および営住宅単身入居制度で入居差別を受けている。民間住宅の入居、公的賃貸住宅の入居に限らず、公的な住宅保証人制度を確立し、公営住宅法を改正する必要がある。
- (1)都市計画とまちづくり
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- 「市町村障害者計画」「福祉のまちづくり計画」は、総合的な都市マスタープランの中であらためて策定される必要がある。
- 総合的な都市政策、交通政策の中に、市民としての障害者の移動・歩行空間整備、施設利用対策を明確に位置づける必要がある。
- 障害者の災害対策も都市計画、まちづくり事業の重要な柱としてしっかりと位置づける。
- 放置自転車は、交通政策として位置づけ、そのための施設整備を優先的施策として取り組む。
- (2)交通機関、バス交通
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- 鉄道駅舎の改善型エレベーター整備指針を見直し、駅舎改善計画を明示する。
- 駅に聴覚障害者などの利用者のために緊急時の情報伝達装置(双方向のFAXや文字情報盤)の設置を進める。
- 生活の利便性を考慮した市内循環型ノンステップコミュニティバスやトラムの普及につとめる。
- 車両内の案内放送は、視覚(絵や文字など)、音声案内を併用する。停留所の押しボタンは上肢障害者にも押しやすい形状とし、位置を統一する。
- 近年、駅員数の削減とともにハード面の一定の改善にも関わらず駅を安全に利用することがかえって困難になる面もある。人的な、ソフト面の環境条件を確保する。
- (3)歩道・ 道路
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- 歩行環境は、障害のない市民を含めて誰もが安心して快適に通行できる空間であるかという原点に立ち戻り整備を行うべきである。
- 歩車分離の場合のデザイン手法、歩車共存型のデザイン手法、歩道のない生活道路における障害者の通行手法、あるいは交通対策を早急に整備する必要がある。
- 視覚障害者誘導用ブロックは、歩行空間に対応した敷設方法を考えるべきである。
- (4)住宅・公共住宅
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- 知的障害者、精神障害者に対する「住宅」の確保を明確に位置づける。
- 民間住宅供給セクターは、戸建住宅、集合住宅に限らず、将来の住宅改造に技術的支援等必要な措置を講じるべきであり、そのための住宅政策、民間事業者支援を行うべきである。
- 民間、公共を問わず住宅は原則として障害者・高齢者配慮の仕様にする法的規制のあり方を検討すべきである。
- 民間、公共を問わず集合住宅の共用部分は原則的にユニバーサルなデザインとする。既存集合住宅の改善を促進するプログラムを構築することが必要である。
- 2階以上のすべての公営住宅にはエレベーターの設置を義務づける。
- 公営住宅法にある「常時介護要件」は撤廃し、本人の選択と判断によってデイサービスやパーソナルアシスタントを活用した多様なライフスタイルが充足できるように改善する。
- (5)グループホーム
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- グループホームは地域生活を可能にする住まい方の一つであるから、グループホームのみが一定の地域に集中したり、個人の尊厳が保障されないグループホームとならないよう制度全体を見直す。
- 公営住宅におけるグループホームの定義、役割を明確にする。グループホームのさまざまな支援は本来住宅サイド、住宅外サイド、あるいはその組み合わせなど柔軟に対応すべきである。グループホームを運営する社会福祉法人以外のNPOによるバックアップサポートも認め、幅広い居住者意識に対応する。
- (6)住宅改造助成制度
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- 住宅改造は進行性の障害に対しても同一空間を継続的に改造支援できるような制度に見直しする。
- 住宅改造助成制度は全国の市町村で統一し、事業化できるよう義務づける。
- 市町村の改造資金助成、住宅相談制度は、当事者と一体になった制度とする。
- (7)機器開発・設備
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- 福祉機器の技術開発は原則としてユーザー参加または評価を取り入れる方向で検討する。
- 福祉機器、生活用補助具などの供給システムを整備し、利用者のモニター制度などを導入する。主要市町村(広域圏を含む)には、福祉機器・補助具センターを設ける。
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ハートビル法、福祉のまちづくり条例など法制度の課題
- 総合的な「交通アクセス法」(仮称)の制定が望まれる。
- ハートビル法、福祉のまちづくり条例など法制度の課題。
- 福祉のまちづくり条例を見直し、交通、住宅、まちづくり、生活サービスを総合的に整備、利用できる制度とする。
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情報保障に関する提言(概要)
本協議会では、本提言をまとめる調査研究の過程で、障害者をめぐる基本的政策の一つとして障害者の「情報保障」を確立することの必要性を確認するとともに、具体的に提言すべき政策内容を検討してきた。障害者自身や障害問題に関心をもつ者が、障害者にとっての情報利用やコミュニケーションの重要性、情報保障の必要性を認識すると共に、社会的に障害者の情報保障に関する関心を高める環境づくりが必要である。さらに、そのような情報の利用やコミュニケーションについてバリアフリー(無障壁)の情報環境づくりの実現のためには、今後推進されるべき施策も多岐にわたる。「障害者の情報保障」の実現は、単に障害者の情報利用やコミュニケーションをめぐる諸問題を解決するのみではなく、障害者が直面するその他の領域の課題に対しても大きく貢献するものである。
以下の情報保障を実現するための諸施策について、国、自治体、企業、非営利組織、国民、障害者自身がその重要性を認識し、具体的に推進することを提言する。
-
障害者に関する主要政策として、障害者の基本的人権としての「情報保障」の位置づけを明確化すべきである。
1995(平成7)年5月、郵政省電気通信審議会はその答申において「情報アクセス、情報発信は新たな基本的人権」と明確に示した。障害者にとって、誰もが自由な社会活動の選択肢を持ち、その他の市民と一緒に社会に参加でき、サービスを受けるとともに、サービス提供者として相互支援の担い手となるような社会の構築は、大切な基本的人権である。そのための基盤が「情報保障」である。特に、障害者が、障害の有無や種別、程度によらず、自立して、多様な社会参加を豊かに果たすことが可能になるためには、特に意志決定のための情報の利用や他者とのコミュニケーション行動について、障害者の主体性を尊重した条件整備がなされなければならない。
情報保障は生活の質の向上に関連性をもつものであるだけではなく、広く障害者の自立と社会参加を実現するために基本的な基盤をなすものであり、障害者が障害のない者と共に生きる社会を構築する上で保障されるべき「基本的人権」として位置づけることができる。情報保障は、障害者の日常生活における自立を支援し、教育、就業、参政権をはじめとする障害者の多様な社会参加を支援するための基本的条件であり、障害者の活動の各領域を通底する課題として、明確に独立して提示されるべき必要がある。その上で、はじめてそのための具体的で詳細な政策が制度化され、実行されるべきである。
-
緊急提言<日常生活での情報保障の確立>を実現する諸政策を推進すべきである。
- (1)マスメディアへのアクセスを保障する
-
- テレビなどの映像メディアを障害者も障害のない者と同様に利用することを支援する字幕放送、音声解説放送、手話放送などの充実とそうした番組の拡大。
- (2)街頭や交通機関における情報利用を保障する
-
- 情報を伝える掲示装置、車内電光掲示、音声放送などの整備
- 障害者が必要に応じて情報入手のためにアクセスできる公衆型端末機器の配備。
- 災害時、緊急時の障害者への迅速で正確な情報提供とガイダンスのしくみづくり
- (3)障害者のコミュニケーションをめぐる障害を軽減し、支援する
-
- 聴覚障害者にとっての「手話通訳者」「要約筆記者」、発話障害者にとっての「リピータ」など、障害者のコミュニケーションを支援する専門性を持った人材の養成と適切な支援体制の確立、そうした制度に関するPRの徹底。
- パソコン利用の要約筆記者の養成、そのためのパソコン購入補助などの制度の整備。
- (4)「日常生活用具」補助事業の項目に「コミュニケーション機器」を含める
-
- 「日常生活用具」としてパソコンおよびパソコン通信やインターネットの利用を認め、年齢制限をなくし、むしろ若い世代からコミュニケーション機器の保障をする必要性。
- 日常生活用具としては「在宅障害者、20歳以上」という制限があるが、自立を支援する意味でも在宅障害者に限らず、施設入所者にも認める必要性。
- 重度障害者の生活の自立を支援するためのコンピューター活用に不可欠な「環境制御装置」についても、「日常生活用具」の補助対象とする。
- (5)情報料金を低廉化・適正化する
-
- 障害者が過度にコスト負担することなく、情報通信機器を活用することが、教育、就業、娯楽など多様な社会参加を促進するための基本的な条件整備であり、料金の低廉化・適正化を進める。
- 情報機器の購入、通信料金、情報そのものの料金など、総合的に情報利用にかかる経済的な負担を低廉化し、適正化する必要がある。
- (6)「情報公開」を促進し、「情報提供システム」を整備する
-
- 障害者にも適切で適合的に行政情報を提供するしくみづくりの必要性。
- 点字・音声情報サービス、ファックス情報サービスの充実。
- パソコン通信、インターネットなどで提供される情報が利用しやすい環境づくり。
- (7)参政権の保障のために選挙における情報保障を実現する
-
- 選挙における投票の情報バリアフリーの確立。
- 政見放送への手話通訳や字幕放送などの整備、選挙公報の点字化・録音化などの条件整備。
- 郵便投票の制度のPRや投票の秘密を保持しやすい電子投票のあり方に関する調査検討。
- (8)障害種別に対応した適正な早期教育・訓練を制度化する
-
- 障害種別によって異なる情報利用上の困難を障害者自身が認識し、適切な情報利用やコミュニケーションができるための教育・訓練機会を早期に提供する必要性。
- 特に、パソコンや情報通信機器を活用することできるための情報教育機会の整備。
- 知的障害者がコンピュータを障害機能を補償する道具として利用する可能性についても研究段階であり、さらなる研究が必要。
- 学校教育における条件整備のみならず、成人に対しては再教育、再学習の機会の整備。
- 中途障害者に対する早期訓練体制の整備
- (9)障害者の情報保障を進めるために著作権法を再検討する
-
- 障害者が必要な文献・資料を利用できるように情報保障をすることは、著作権者の権利を脅かすものではないことを社会的な認識として確立し、点字図書館以外の場でも、第三者が障害者のために書籍、新聞、雑誌などを録音し音声媒体としたり、ビデオ作品に字幕放送、音声解説放送や手話放送を付加して活用したり、障害者の利用のためのテレビやラジオなどでの放送が出来るような制度の確立。
- 急激に電子媒体が増加する中で、長い間印刷媒体を主として扱う観点からつくられてきた制度を、現代の技術革新に即応した制度へと適合的に変革していく社会的努力が必要。
- 社会的情報の利用における実質的な平等を図るうえで、障害者の情報保障の視点から著作権法の改正を含めた再検討が必要。
- (10)障害理解を促進し、障害者のプライバシーを保護する
-
- 障害の種別や個別の条件とその理解するテンポに応じた、わかりやすい情報提供をすることができる人材育成と条件整備が必要。
- 特に知的障害や精神障害に関するあやまった障害認識に基づく報道の被害をなくす。
- 障害についての正しい理解と認識を深めるような報道や情報提供が必要。
- 障害者の実態を知るとともに、共に生きるために、障害者がどのような援助を求めているか、どのような支援が適切かなどについての前向きな世論を育てていくための配慮。
- 障害者が、自分の情報についてコントロールする権利、プライバシーの権利を守ることができるような環境整備が重要。
- 無用な個人情報の提供を拒否する権利、不本意な個人情報が漏洩された際に撤回できる権利といった、基本的なプライバシーの保護の確立。
- (11)障害者のコミュニケーションを支援する人材の育成とネットワーク化を促進する
-
- 手話通訳者、要約筆記者の育成。
- 地域を越えて人材のネットワーク化がなされ、必要に応じて適切な公的支援体制がとれるような条件整備が必要。
- 障害者がコンピューターやコンピューター・ネットワークを活用するためには、利用方法の指導や機器の購入や設定に関する支援が必要であり、公的支援のみならず、パソコンボランティアなど市民や非営利組織の援助が有効である。こうした自発的な活動の活性化を図ることが有効。
- 障害者がパソコンやパソコン・ネットワークを利用する機会を支援するのみではなく、それを利用したコミュニケーションの場づくりや、障害者の参加を支援する活動が必要。
- 視覚障害や聴覚障害者による「点字や手話による遺言」を認めるなど、社会的な申請手続や事務処理が障害者に不利にならないような制度の再検討。
- (12)地域レベルでの情報保障センターを整備・確保する
-
- 従来整備されてきた、あるいはこれから整備される障害種別ごとの情報保障に関連した施設の連携を図り、その情報を障害者に提供することが必要。
- 障害者が利用する社会福祉施設、特に障害担当の行政窓口の職員が、障害者の情報保障に関する知識・技術を取得することが必要。
- そのための研修機会の整備は重要。
- 障害者の情報保障を支援する、情報機器やコミュニケーションに関する専門的な知識を持った、障害者の情報環境に関する総合的なコーディネートができるコンサルタントのような「専門職」の育成。
- 精神障害者の情報窓口が保健所と市町村にわかれているが(市町村努力義務)、市町村における精神障害者福祉についての知識の普及を図り、制度を充実。
- (13)障害者が研究開発に参加する
-
- 障害のない者にとっては理解が促進されるということで、近年重視されてきている映像を重視する技術(GUI化)は、視覚障害者にとっては利用しにくく、理解しにくいものになっている。そこで、これに対する補填措置が必要。
- 最近増加しているデジタル衛星放送などに障害のある者がアクセスできるための受信機器などの開発研究は緊要。
- 聴覚障害に関しては、家庭内利用機器(チャイムから電子レンジまで)を視覚や振動で知らせる機能採用のガイドラインづくり、補聴器、人口内耳など難聴者福祉機器についての公的な開発、公的施設ならびに一定規模以上での施設での聞こえの設備のあり方など、研究開発のフロンティアへの参加が有用。
- 障害者の自立と社会参加に有効であると期待されるパソコンを、視覚障害者や指先などの障害で入力上に障害がある者が使う場合有力な音声入力装置の開発の緊要。
- だれでもが利用できるために、情報通信機器の「ユニバーサル・デザイン」が重視される現状にあって、企業や行政の研究開発過程において、利用者としての障害者の声がきかれるとともに反映されるための仕組みづくり。
- 必要な情報を簡単に、的確に入手出来るような検索システム(検索エンジン)の構築、または障害者のためのコンテンツやインデックス作成が必要。
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「障害者に関する総合計画提言」作成事業プロジェクトチーム委員一覧(1996年9月〜1998年3月)
*各委員の所属や役職などの一部はプロジェクト設置時です(敬称・法人格略)。
所得保障に関する研究
委員長 |
大山 博(法政大学社会学部教授) |
副委員長 |
池末 美穂子(全国精神障害者家族会連合会事務局長補佐) |
委 員 |
岡部 卓(東京都立大学人文学部社会福祉学科助教授) |
高橋 芳樹(堺東社会保険事務所年金給付課長) |
関根 義雄(障害者の生活保障を要求する連絡会議幹事) |
岩上 義則(日本盲人社会福祉施設協議会理事) |
白井 俊子(東京都心身障害者福祉センター技術援助科長) |
下川 政治(福岡市障害者関係団体協議会会長) |
関口 春喜(全国精神障害者団体連合会) |
事務局 |
岩崎 晋也(共同作業所全国連絡会、法政大学助教授)*委員兼務 |
柳沢 充(障害者と家族の生活と権利を守る都民連絡会事務局) |
白土 剛司(日本社会事業大学) |
菊池 江美子(日本精神医学ソーシャルワーカー協会会員) |
施設制度・施設体系に関する研究
委員長 |
河野 康徳(昭和女子大学教授) |
副委員長 |
鈴木 清覚(共同作業所全国連絡会理事長) |
委 員 |
峰島 厚(全国障害者問題研究会副委員長、江南女子短期大学教授) |
島本 久(全国精神障害者家族会連合会総務部長) |
五十嵐 光雄(全社協・全国身体障害者施設協議会、湘南希望の郷施設長、日本盲人社会福祉施設協議会理事) |
小田 毅(全国救護施設協議会調査・研究・研修委員) |
山本 和儀(日本理学療法士協会保健福祉部員、大東市保健医療福祉センター次長) |
山崎 國治(全国重症心身障害児(者)を守る会常務理事) |
中村 喜長(ゼンコロ、東京コロニー大田福祉工場施設長) |
柴田 洋弥(全日本手をつなぐ育成会機関誌編集委員、希望園施設長) |
大矢 すすむ(全日本ろうあ連盟、特別養護老人ホームいこいの村梅の木寮寮長) |
田中 のぞみ(全国盲重複障害者福祉施設研究協議会会長) |
玉井 弘之(日本知的障害者愛護協会常任理事) |
花澤 佳代(日本精神医学ソーシャルワーカー協会事務局次長) |
事務局 |
小野 浩(あじさい共同作業所) |
職業リハビリテーション・雇用制度に関する研究
委員長 |
安井 秀作(国立職業リハビリテーションセンター次長) |
副委員長 |
池末 亨(東京学芸大学助教授) |
委 員 |
大漉 憲一(東京都心身障害者福祉センター身体障害者福祉司) |
大曽根 寛(愛知県立大学文学部社会福祉学科助教授) |
八木原 壮夫(東京都障害者職業センター多摩支所支所長) |
浅輪 田鶴子(埼玉県障害者協議会理事) |
大谷 清(日本整形外科学会理事、国立療養所村山病院院長) |
勝又 和夫(ゼンコロ、東京コロニー常務理事) |
野口 圭介(日本筋ジストロフィー協会事務局長) |
加納 正(障害者の生活と権利を守る全国連絡協議会相談員) |
中村 靖夫(障害者の生活保障を要求する連絡会議事務局員) |
萩原 善次郎(日本盲人社会福祉施設協議会理事) |
館 暁夫(職業能力開発大学校助教授) |
本田 一郎(全国精神障害者団体連合会) ※〜1997.7 |
伊藤 龍馬(全国精神障害者団体連合会) ※1997.8〜 |
瀧 誠(日本精神医学ソーシャルワーカー協会会員、埼玉県立精神保健総合センター) |
事務局 |
杉本 豊和(共同作業所全国連絡会事務局員) |
山田 雅子(埼玉県障害者協議会) |
地域生活と介護制度のあり方に関する研究
委員長 |
寺山 久美子(東京都立医療技術短期大学教授) |
副委員長 |
亀山 幸吉(淑徳短期大学助教授) |
委 員 |
山下 隆昭(日本理学療法士協会役員、兵庫県リハビリテーションセンター部長) |
飯笹 義彦(日本肢体不自由児協会業務部長) |
林 浩三(全国障害者とともに歩む兄弟姉妹の会事務局次長) |
坂本 秀夫(全国難病団体連絡協議会事務局長) |
貝谷 久宣(日本筋ジストロフィー協会理事) |
清水 圭子(全日本手をつなぐ育成会前機関誌編集委員) |
伊藤 利之(日本リハビリテーション医学会評議員、横浜総合リハビリテーションセンターセンター長) |
太田 修平(障害者の生活保障を要求する連絡会議事務局長) |
田中 亮治(日本盲人社会福祉施設協議会理事) |
服部 隆(全国精神障害者団体連合会) |
間 淑子(日本精神医学ソーシャルワーカー協会会員、JHC板橋) |
事務局 |
市川 徹(障害者の生活と権利を守る全国連絡協議会事務局) |
石川 佳苗 |
交通アクセス・まちづくり・住居等に関する研究
委員長 |
高橋 儀平(東洋大学工学部助教授) |
副委員長 |
三沢 了(障害者の生活保障を要求する連絡会議代表) |
委 員 |
福屋 靖子(日本理学療法士協会、筑波大学教授) |
小泉 俊男(日本筋ジストロフィー協会事務局次長) |
川井 節夫(全日本難聴者・中途失聴者団体連合会横浜支部副会長) |
林 章(愛知工業大学助教授) |
水野 翔子(全日本手をつなぐ育成会機関誌編集委員、横浜国際福祉専門学校) |
吉川 和徳(日本理学療法士協会、板橋おとしより保健福祉センター) |
川内 美彦(アクセスプロジェクト) |
市橋 博(障害者と家族の生活と権利を守る都民連絡会事務局長) |
佐野 政史(全国精神障害者団体連合会) |
事務局 |
八藤後 猛(日本大学理工学部建築学科助手)*委員兼務 |
伊達 雅則(中央共同募金会総務部副部長) |
情報保障に関する研究
委員長 |
清原 慶子(ルーテル学院大学文学部教授) |
副委員長 |
大槻 芳子(全日本ろうあ連盟東京事務所長) |
委 員 |
田中 徹二(日本点字図書館常務理事・館長) |
折手 道広(全国聴覚障害者親の会連合会会長) |
居村 茂幸(日本理学療法士協会理事、兵庫医科大学病院リハビリテーション部勤務) |
川越 利信(視覚障害者文化振興協会常務理事、JBS日本福祉放送、日本盲人社会福祉施設協議会理事) |
矢澤 健司(日本筋ジストロフィー協会理事) |
高木 富生(全日本難聴者・中途失聴者団体連合会理事) |
松矢 勝宏(東京都立学芸大学教授) |
吉田 敏彦(障害者の生活保障を要求する連絡会議幹事) |
鈴木 理司(ナムコ企画開発室長) |
小和瀬 芳郎(全国精神障害者団体連合会)
※〜1997.7 |
伊藤 龍馬(全国精神障害者団体連合会) ※1997.8〜 |
事務局 |
薗部 英夫(全国障害者問題研究会全国事務局長)*委員兼務 |
堀込 真理子(ゼンコロ、トーコロ情報処理センター)*委員兼務 |
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